2021年4月14日水曜日

前田夕暮


魂よいづくへ行くや見のこししうら若き日の夢に別れて


君ねむるあはれ女の魂のなげいだされしうつくしさかな


風暗き都会の冬は来りけり帰りて牛乳のつめたきを飲む


沈思よりふと身をおこせば海の如く動揺すなり、入日の赤さ


我がこころの故郷つひにいづかたぞ彼の落日よ裂けよとおもふ


蜜蜂のうなりうづまく日のもとをひっそりとしてわがよぎりたり


ひたむきに空のふかみになきのぼる雲雀をきけば生くることかなし


山蔭に人をいたぶる声きこゆその声石の泣くがに悲し


戦ひに敗れてここに日をへたりはじめて大き欠伸をなしぬ

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