絢爛の牡丹のさなかに置きてみて見劣りもせぬ生涯なりし
淋しくもあるか子ら食む白飯は嫁ぎし日の帯にしあるを
人妻はかかるときにもほほゑみて容崩さぬものとかと泣かゆ
愛憎の入り交じりたるわが膝を枕に何を想へるや夫
水の中根なく漂ふ一本の白き茎なるわれよと思ふ
絢爛の花群のさ中に置きてみて見劣りもせぬ生涯が欲しき
生涯に二人得がたき君故にわが恋心恐れ気もなし
冬の皺よせゐる海よ今少し生きて己の無惨を見むか
救ひなき裸木と雪のここにして乳房喪失の我が声とほる
葉ざくらの記憶かなしむうつ伏せの我の背中はまだ無瑕なり
灯を消してしのびやかに隣に来るものを快楽の如くに今は狎らしつ
この夜額に紋章のごとかがやきて瞬時に消えし口づけのあと
息切れて苦しむこの夜もふるさとに亜麻の花むらさきに充ちてゐるべし
夕ぐれは水の如くに流れたり宗八かれひ香しく焼く
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