夜の帳にささめき尽きし星の今を下界の人の鬢のほつれよ
春の国恋の御国のあさぼらけしるきは髪か梅花のあぶら
人かへさず暮れむの春の宵ごこち小琴にもたす乱れ乱れ髪
その子二十櫛にながるる黒髪のおごりの春のうつくしきかな
清水へ祇園をよぎる桜月夜こよひ逢ふ人みなうつくしき
雲ぞ青き来し夏姫が朝の髪うつくしいかな水に流るる
やは肌のあつき血汐にふれも見でさびしからずや道を説く君
夜の神の朝のり帰る羊とらへちさき枕のしたにかくさむ
君が歌に袖かみし子を誰と知る浪速の宿は秋寒かりき
笛の音に法華経うつす手をとどめひそめし眉よまだうらわかき
むねの清水あふれてつひに濁りけり君も罪の子我も罪の子
二十とせの我世の幸はうすかりきせめて今見る夢やすかれな
かくてなほあくがれますか真善美わが手の花はくれなゐよ君
くろ髪の千すぢの髪のみだれ髪かつおもひみだれおもひみだるる
鶯に朝寒からぬ京の山おち椿ふむ人むつまじき
うたたねの君がかたへの旅づつみ恋の詩集の古きあたらしき
こころみにわかき唇ふれて見れば冷かなるよしら蓮の露
京の鐘この日このとき我れあらずこの日このとき人と人を泣きぬ
このおもひ真昼の夢と誰か云ふ酒のかをりのなつかしき春
春みじかし何に不滅の命ぞとちからある乳を手にさぐらせぬ
しろがねの舞の花櫛おもくしてかへす袂のままならぬかな
天の川そひねの床のとばりごしに星のわかれをすかし見るかな
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