2021年4月9日金曜日

与謝野晶子

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

私の生い立ち (岩波文庫) [ 与謝野晶子 ]
価格:704円(税込、送料無料) (2021/4/10時点)


 

夜の帳にささめき尽きし星の今を下界の人の鬢のほつれよ

 

春の国恋の御国のあさぼらけしるきは髪か梅花のあぶら

 

人かへさず暮れむの春の宵ごこち小琴にもたす乱れ乱れ髪

 

その子二十櫛にながるる黒髪のおごりの春のうつくしきかな

 

清水へ祇園をよぎる桜月夜こよひ逢ふ人みなうつくしき

 

雲ぞ青き来し夏姫が朝の髪うつくしいかな水に流るる

 

やは肌のあつき血汐にふれも見でさびしからずや道を説く君

 

夜の神の朝のり帰る羊とらへちさき枕のしたにかくさむ

 

君が歌に袖かみし子を誰と知る浪速の宿は秋寒かりき

 

笛の音に法華経うつす手をとどめひそめし眉よまだうらわかき

 

むねの清水あふれてつひに濁りけり君も罪の子我も罪の子

 

二十とせの我世の幸はうすかりきせめて今見る夢やすかれな

 

かくてなほあくがれますか真善美わが手の花はくれなゐよ君

 

くろ髪の千すぢの髪のみだれ髪かつおもひみだれおもひみだるる

 

鶯に朝寒からぬ京の山おち椿ふむ人むつまじき

 

うたたねの君がかたへの旅づつみ恋の詩集の古きあたらしき

 

こころみにわかき唇ふれて見れば冷かなるよしら蓮の露

 

京の鐘この日このとき我れあらずこの日このとき人と人を泣きぬ

 

このおもひ真昼の夢と誰か云ふ酒のかをりのなつかしき春

 

春みじかし何に不滅の命ぞとちからある乳を手にさぐらせぬ

 

しろがねの舞の花櫛おもくしてかへす袂のままならぬかな

 

天の川そひねの床のとばりごしに星のわかれをすかし見るかな

 


0 件のコメント:

コメントを投稿