あかあかと一本の道とほりたりたまきはる我が命なりけり
夕されば大根の葉に降るしぐれいたく寂しく降りにけるかも
蚕の部屋に放ちし蛍あかねさす昼なりしかば首すぢあかし
けだものは食もの恋ひて啼き居たり何といふやさしさぞこれは
死に近き母に添寢のしんしんと遠田の蛙天に聞ゆる
わが母を焼かねばならぬ火を持てり天つ空には見るものもなし
このくにの空を飛ぶとき悲しめよ南へむかふ雨夜かりがね
むなしき空にくれなゐに立ちのぼる火炎のごとくわれ生きむとす
しんしんと雪ふるなかにたたずめる馬の眼はまたたきにけり
沙羅の花ここに散りたり夕ぐれの光ののこる白砂のうへ
沈黙のわれに見よとぞ百房の黒き葡萄に雨ふりそそぐ
ただひとつ惜しみて置きし白桃のゆたけきを吾は食ひおはりけり
新宿のムーラン・ルージュのかたすみにゆふまぐれ居て我は泣きけり
最上川の上空にして残れるはいまだうつくしき虹の断片
いつしかも日がしづみゆきうつせみのわれもおのづからきはまるらしも
壁に来て草かげろふはすがり居り透きとほりたる羽のかなしさ
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