幾山河越えさり行かば寂しさの終てなむ国ぞ今日も旅ゆく
白鳥は哀しからずや空の青海のあをにも染まずただよふ
うら恋しさやかに恋とならぬまに別れて遠きさまざまな人
白玉の歯にしみとほる秋の夜の酒はしづかに飲むべかりけり
たぽたぽと樽に満ちたる酒は鳴るさびしき心うちつれて鳴る
足音を忍ばせて行けば台所にわが酒の壜は立ちて待ちをる
うす紅に葉はいちはやく萌えいでて咲かむとすなり山ざくら花
旅人のからだもいつか海となり五月の雨が降るよ港に
麦ばたの垂り穂のうへにかげ見えて電車過ぎゆく池袋村
この冬の夜に愛すべきもの、薔薇あり、つめたき紅の郵便切手あり
水無月の青く明けゆく停車場に少女にも似て動く機関車
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